サティ(sati)思い出すこと

satiはマインドフルネスの原語のパーリー語に由来する。この言葉の意味は、仏教的な文脈では、「気づく」と同時に「(法)を思い出す」という意味もあります。私たち、日本人の文化の中には、このようにマインドフルネスを思い起こさせてくれる文化がいくつも存在します。

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クリスマス家族懇親会

 私の母校の大学はキリスト教系です。
 このアドベントの季節になると正門を入ると、クリスマスを迎えるために神聖でとても厳かな感じがして、おのずと身が引き締まります。

 久しぶりに訪れた母校のキャンパスを歩きながら、時々立ち止まり、懐かしい校舎や大きな木の傍で、ひと呼吸し、ゆっくりと周りを見回すと、高くなった木々や変わらない校舎、そして、新しく建った建物等、友達と歩いた道など様々な思い出が浮かびます。

 すると、胸がキューとなったり、お腹のあたりにフワッーと何とも言えない感覚が広がり、身体が暖かくなります。

 フッと意識が過去にさかのぼり、様々な思い出が走馬灯のように心に浮かびます。

 「懐かしい…。」かつて、自分の人生の大切なひと時を過ごした場所。

 今日は、私の住む地域の同窓の方々が中心となり、毎年家族親睦クリスマス会が開かれています。
 今回ご縁があり、私は「マインドフルネス」について同窓の皆様にお話しできるという大きな祝福に恵まれました。

 人生の大先輩たちもおられて、ドキドキです!

 「マインドフルネス」を言葉で説明はするのですが、一番大切にしているのは、たとえ短い時間でもご自身で体験していただくことです。今回は、短い静坐瞑想を体験していただきました。

心の中の種

 講演後、様々な感想をいただきました。

 ある方は、「あなたの話を聞いて、50年前の会社の初任者研修を思い出しました。京都の万福寺で坐禅が組み込まれた研修でした。質素な食事や僧侶の方の法話を聞いて、最後は普茶料理をいただいたなあ。」と懐かしく思い出されていました。

 50年前というとMBSRのプログラムができる前です。驚きでした。

 またある方は、少林寺拳法をしておられ、「改めて呼吸の大切さと武道とのつながりを感じました。」とお話しくださいました。

 「マインドフルネス」の原語はパーリー語の「サティ」であり、本来の仏教的な文脈の意味は「心に留め置くこと、(法を)思い出すこと」でもあります。今この瞬間に起きている思いや考え、感情、身体感覚、そして法を智慧(般若)と倫理(戒)に照らして、見失わずに保ち続ける力とも言われています。

 50年前に会社の研修に携わっていた方々は、若い新入社員さんの人生に待ち受けるであろう試練に対して一つのよりどころとなる心構えや対処法が「禅」の中にあることを知っておられたのでしょう。

 また、少林寺拳法で呼吸で心と身体を整えたご経験では、武道の中に人を健康に導き、ストレスに対処する呼吸の大切さを思い出されたとのことでした。

 茶道の先生をされている方からは、一期一会の精神、一つひとつの所作に心を籠める、そのような所にマインドフルネスと一致点を見出していただいたようです。

 禅や武道、茶道という文化を通して、私たち日本人の心の中には、「マインドフルネスの種」が、様々な所で蒔かれるているんだなあと感じました。

 もしかしたら、「マインドフルネス」は、私たち日本人にとっては、新しい技法ではなく再び出会いなおす「智慧」かもしれない…。そして、今それは、科学で裏打ちされてきています。

 「智慧との再会」という言葉が心をよぎりました。

そして、祈り

 私たちは、会食の前には、短い祈祷をささげます。

 牧師様の言葉により、姿勢を正し、目をつむり、耳を傾け、お話を聞き、そして自分たちやその周りの人々、そして世界の平和を祈ります。

 この「祈り」という行為の中には、まるでマインドフルネスのプラクティスの中にあるSTOPのような働きそのものが息づいています。

 今していることを止めて

 一息おき、

 心の中の目で今唱えられている祈りに耳を傾け

 そして、次に自分が選択する

 

 牧師様の言葉は、聖書の一文を唱え、自分やその周りに暖かい気持ちを広げていくものであり、まるでそれは私にとって、「慈悲の瞑想」そのものでした。

 学生時代は思いもよらなかった、このような習慣の中にキリスト教におけるコンパッションの種も私たちの心に蒔かれていたのだとあらためて感じました。

 宗教や人種や時代や文化を超えて私たちを豊かにしてくれる先人たちの贈り物の豊かさを感じます。

 そして、この瞬間に、暖かいものにつつまれて、同窓生の方々とつながり、今この瞬間にいることのできる幸せを感じました。

 そして、すべてのことに感謝を感じました。

心を寄せて…

 この会が終わりました日の夜にアメリカから悲報が届きました。

 この度ブラウン大学において起きた出来事に深い悲しみを覚えています。失われた命に心より哀悼の意を表するとともに、ご家族、ご友人、そして大学コミュニティの皆様に祈りと連帯の思いを届けます。私は、ブラウン大学のMBSRを学んだものとして、貴学が大切にしてきた人間の尊厳と気づきの精神が、今後も悲しみの中にある方々を支えるともしびとなることを願っています。日本より心を込めて。

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