ヴィジョンを燃やす ~Kindle a vision~
ジョン・カバットジンさんは、“FULL CATASTROPHEIVING”の中で、『ストレス・リダクションクリニックに来られる方は、どんな病気であっても、ほとんどの方が「本当は心の平穏を得たい。」とおっしゃいます。心身の痛みを抱えているのですからその目的は理解できます。
しかし、心の平和を得るためには、自分が本当に望んでいることのビジョンを描き、内外の困難や傷害、挫折に直面しても、そのビジョンを維持しなければなりません。(中略)それは(ビジョンは)、生命力にあふれた健康かもしれないし、ある人にとっては、くつろぎ、安らぎ、友好的で寛容な思いやり、調和、知恵などかもしれません。
また、マインドフルネス瞑想を続けていくには「7つの大切な態度」(現在は、generosityとgratitudeの2つを加えて9つとなっている)とともに、自分の全存在をかけて具現化する精神性(spirit)、visonを持つことも大切です。」と言われ、そのことを「kindle a vision」とも表現されています。(日本語訳の「マインドストレスストレス低減法」では、「vision」は「イメージ」と訳されています。)
自分の全存在をかけて具現化する精神性(spirit)という言葉を聞いたときに、私は一人の人を思い出しました。
映像詩 Visual Poetry
「奈良、時の雫」という作品をYou-Tube等で発信し続けておられ保山耕一さんという映像作家さんがおられます。
「50歳の夏に直腸がん、余命2カ月と宣告され、もう一度春日大社を撮影したいと思った。私の生きている世界はこんなに美しい。」という強い意図を持たれて「映像詩、春日大社~私の命と春日の神様~」という作品を作り続けておられます。
古の奈良の美しさを通して、自然の美しさとそこで暮らす人間の営みや生き物の存在の神々しさと調和の一瞬、一瞬に命を込めておられるのを感じます。
これらの息をのむほど素晴らしい瞬間が映像詩として音楽とともに表現されています。
この方の作品を見ると私は、ジョン・カバットジンさんの上記の一説が頭に浮かんできます。
Kindle a vision…
「病」は、時に人に強烈に「死」を意識させ、命の限界を意識させ、自分に残された時間をはっきりと明確に意識させるでしょう。
だれの人生にも訪れる可能性のある「病」の時に、「死」への恐怖や不安に押しつぶされずに、それらの存在も無視したり、拒絶したりすることなく、それはそれとして、ただ「呼吸している限りは、自分には悪い所よりもいい所の方が多い」(“FULL CATASTROPHEIVING” Introduction to the Second Edition p.xxviii)と自分を信じること。
それは、瞬間瞬間に自分のvisionを実践していける精神(spirit)を持ち、「平穏な心=peace of mind」を生み出していく源泉になるかもしれません。
「平穏な心」は、何もしないで得られるのではなく、微妙なバランスの上での不断の努力で成り立つのかもしれません。
私は、マインドフルネスを知る前にガンを経験しました。今、もしマインドフルネスを用いた対処法を知っていれば、あの時、もう少し自分をよりよくケアできたのではないかと感じています。
また「病」が私の人生にやって来たときには、以前の自分とは違うこのような実践を日々の生活に活かせたらと思っています。