~MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の終日プログラムより~
マインドフルネスのプラクティスの中に、「観る瞑想」があります。ご存じでしょうか?
私は、終日プログラムに参加し、歩く瞑想時にこの瞑想を行いました。このプログラムは、朝から沈黙の中で始まり、様々なプラクティス(実践)が行なわれます。たいてい午後に「歩く瞑想」と「観る瞑想」を組み合わせて、外に出てゆっくりと歩き、立ち止まりたいなあと感じた安全なところで止まり、周りにあるものを観察します。そして心惹かれるものに近づきゆっくりと観察します。その時に自分の中に立ち上がる思いや考え、感情、身体感覚を観察します。
お天気の良い日の午後3時頃でした。歩いていると、崩れかけた古い壁の隙間に紫の小さな花が咲いていました。 「何だろう?」と思い、顔を近づけてじっと観察します。石をコンクリートで塗り固めた壁に出来た隙間、こんなに小さな隙間にしっかりと根を張り、花を咲かせている花がありました。スミレの花でした。
スミレの種はどうやってこの隙間を見つけ、芽を出し、花を咲かせることができたのでしょうか?花が終わり、種が出来たとしても、風や雨で流されて土の無い所に行くかもしれないし、溝から下水管に流れこんでしまうかもしれません。近くの道路に飛んでいけば、車にひかれてしまうかもしれません。この小さなスペースにじっととどまり、時を待ち、春の訪れを感じ取り、成長し花開いたのでしょう。
なんという偶然の重なり合いと命の不思議さだろうという考えが私の中に浮かびました。またスミレの花をしみじみと観察するとその色が微かなグラデーションになっていること、紫色の濃いい部分が中心から細かく花弁の端までるで私たちの体を走る血管のように広がっています。「ああ、私たちと同じ…。」そんなスミレを眺めていると自然の奇跡を思うといとおしさに目や胸のあたりが熱くなります。
今度は、少し離れて、壁全体を見て驚きました。壁一面にスミレの花がここかしこに揺れながら咲いていたのです。 壮観でした。たった一つでもこんな固い壁の隙間に命を宿すことは奇跡的なのにこんなにたくさんのスミレが咲いている…。
スミレはどんなことを思い生きてるんだろう?私は今までまったく気が付かなかったけれど、ここまでスミレが広がるのにどれくらいの時間がたっていたのだろうか?きっと何年も何年も、繰り返し繰り返し、自分がダメだなんて評価したり批判したりせず、毎年新しい気持ちで、忍耐強く、自分たちの生命力を信じて、むやみに努力せず、しかたのない時は受け入れ、それにとらわれず生きてきたのだろうなあと感じました。そして今ここにスミレの花は存在しています。
これらはマインドフルネス瞑想に取り組むときの7つの態度です。
- 自分で評価を下さないこと
- 忍耐づよいこと
- 初心を忘れないこと
- 自分を信じること
- むやみに努力しないこと
- 受け入れること
- とらわれないこと 「マインドフルネスストレス低減法」 J.カバットジン 春木豊訳 北大路書房より
自然界では、このような営みが繰り返されてきている…。
人間はどうなんだろう…。私はどうだろう…。ということを感じた「観る瞑想」でした。そしてこの印象深い体験はこのブログのドメインにもなりました。