乳がんを経験して

私たちの人生は、生きている限り、様々な困難(catastrophe)が降りかかる。そんな時、心が粉々に砕け、無力感に打ちのめされるような時、自分のために何かできることはないだろうか?
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乳がんの経験

 今日の話題は、私が経験した乳がんについてです。

 それに触れることがつらい方もおられると思いますので、「読まない」ということも選択ですので、どうぞ、無理をなさらないでください。

 私は乳ガンの経験者です。

 定期的なフォローを受けていましたが、検診で石灰化が見られるということで、市民病院で精密検査を受けることになりました。

 私の中で、以前の記憶が蘇ります。
 様々な検査から始まり、医師から告げられた病名、さらなる検査と放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的剤治療など。またそれに付随した身体の感覚や、思い・考え、感情。

 けれども当時の私と違うところがありました。マインドフルネスの様々なプラクティスを続けていたことです。

「今ここ」にいる自分自身への感謝

 検査の結果が出るまで約2週間ありました。

 日々の静坐瞑想の中で、床に座り、自分を支えている腰のあたりの体の感覚に注意を向けていました。

 当時の記憶に関する様々な思いや考え、感情が沸き起こってきます。また、破局的な思考も浮かんできました。
 そんな中、もう一度、今この瞬間の呼吸の感覚に注意を向けます。

 一呼吸として同じ呼吸はありません。

 また、私を支えてくれている身体の重み。

 それを私を支えてくれている床、大地、地球を感じていました。

 すると、「ああ、私は今、生きている!」と涙とともにいっしょに、人生を伴走してくれている私の身体に感謝の気持ちわいてきました。

 「再発していないかもしれないし、検査の結果を聞くまで思い悩みすぎる方が、心にも身体にもよくないんだから検査結果が出てから考えよう。」という考えが浮かび、その考えを私は選択することにしました。

 こんな風に、「病気=自分」ではなくなりました。

 自分と病気との間にスペースができて、病気だとしても、それは、自分の一部分であり、そのほかは大丈夫だと考えたり、感じられるようになったのも、もしかしたらマインドフルネスのプラクティスのおかげかもしれません。

 検査の結果は、術後の自然な変化の範囲で今のところ心配なないだろうということでした。

マインドフルネスのプラクティスが与えてくれたもの

 人生には、時として、様々な試練や困難が立ちはだかり、しばしば自分自身が粉々になってしまうような経験も起こります。

 マインドフルネスのプラクティスを知らなかった当時の私は、病気そのものの治療に費やすエネルギーだけでも大変なのに、第二、第三の矢である恐怖や不安、そして自責の念で自分自身を苦しめていました。

 けれども今は、マインドフルに自分の心と身体を観察することを継続してきたおかげで、以前とは異なる態度や方法で、自分自身に対処することができるようになったと感じました。

 偶然にも、1月のFEIの会の話題は、リンダ・カールソンさんのマインド&ライフで語られた「マインドフルネスとガン」でした。

 リンダ・カールソンさんは健康心理学者、コンプレイティブ(瞑想・内観)研究者でガンと心理社会的ケアの実践と研究にマインドフルネスを医療の世界に導いたパイオニア的存在です。

 彼女はその中で、「あなたがなぜガンになったのか、それはだれにも分かりません。もしかしたら一生分からないかもしれません。でも”今ここ”にいるという事実は確かです。そこからスタートしましょう。」と述べられています。

 病気の治療自体は、医療機関と相談し、協力して進めていきますが、マインドフルネスは、自分自身でも自分の中に眠っている力を呼び起こし、自分と仲良くなり、自分自身が、自分の健康に寄与することができる、そのような可能性に満ちています。

 ちょうど私が乳がんにかかった20年前には、研究は緒に就いたばかりでしたが、現在では、マインドフルネスは、がんとともに、そしてその先の人生をよりよく生きるための一つの可能性「マインドフルネスストレス低減法」 J・カバットジン  春木豊訳 p.304)を示してくれています。

 私が、当時もっとも助けになったのは、同じ経験をした患者会の先輩たちの支えでした。今は、もしかしたら、自分を支える選択肢として、マインドフルネスが加えられるかもしれません。

 今、私と同じ経験をしている方々、どうか、このような可能性も知っておいてください。

 あなたは一人ではないし、無力でもありません。

 私もあなたと同じ道を歩いています。

 いっしょに生きていきましょう。

 今日は立春

 「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」

 

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