私たちの周りの自然 #2

mindfulness, nature
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「あってほしくないもの その②」

 思い出してみると、ムカデに咬まれた日、こんな始まりでした。私が、「今日の畑はどんな様子かな?」と見まわしていると、「どうや、おたくの様子は?」と師匠のお一人が尋ねてくだいました。「キュウリには、オレンジ色の虫がいっぱいたかっていて。ジャガイモの葉は、すごく食べられていて…。Kさんのブロッコリーには青虫がいっぱいいて…。」と虫の悪事を報告しました。「そうか、虫は、よう鳥が食べよるけど、ここは、鳥が入ると野菜もついばむからネットをかけてるからなあ。一回ネット(ここは、畑の周り全体にネットをしています)を外してみてもいいかもしれんなあ。ところで、あんたのジャガイモはどんなんや?」と聞いてくださるので、ジャガイモの畝に来てもらいました。その時、足長バチがジャガイモの葉に寄ってきていました。「ああやって寄ってくるというのは食べるものがあるんやで。ヨトウの匂いでもすんのかな。」との事です。無知な私は「ハチって花の蜜を吸うんじゃないんですか?」と聞くと「足長バチは肉食で虫を食べるよ。まあ、虫らも生きていかんとあかんからなあ。」との事でした。

 「私の大切なジャガイモの葉を食べるヨトウムシ!ジャガイモ大きくならないやん!」、と食欲という本能を脅かされ、恐怖を感じ、扁桃体を刺激された私は、ムカデに刺された指を冷やしながら嫌悪の対象がハチ、そして虫全体に般化してしまったようです。「やっぱり憎し!虫たち!ハチまで来るってどういうこと?怖いやん!」と思い、家に帰り調べると「足長バチは様々な昆虫などを餌としていること、毛虫やカメムシといった多くの害虫(多分ヨトウムシも)も含まれること、活動期のこの時期、休みなく続くはらたきバチ達の「狩り」は私たちの環境の中で重要な役割を果たしていること。毒針を持っているが、性格は比較的おとなしく、刺激を与えないかぎり、刺されることはないこと」などがわかりました。「ムカデもハチも私も意図するところは同じか…。」少し、マインドフルネスの成果でしょうか!?前頭前野が働いてきました…。

バランス

 鳥の害を防ごうとしてネットをかけると、鳥は入ってこないので、鳥からの害は防げるかもしれません。けれども、本来鳥が食べてくれる虫が逆に繁殖し、畑の作物を食べてしまいます。またネットをかけなければ、一生懸命に作った野菜や果物が鳥たちに食べられてしまします。自然の中にいれば、完全に何かをコントロールことは出来ません。すべてのものや移り変わっていきます。

 自然の中で、人間が営みを続けるためには、どのあたりのバランスで、自分たちの食べる物を作っていかないといけないのか…。本当に難しい問題です。たった畝半分でジャガイモを育てている私ですら、虫や鳥たちを「自分にとってあってほしくないもの」「私のジャガイモをだめにするもの、排除したい!」というように考えてしまいます。あまりに囚われてしまうと、結局は、思いがけないアンバランスな結果となる可能性があるかもしれないと感じました。囚われてしまうとバランスを失うというのは、日常の私の生活でもよく起こることです。バランス…この精妙で保つことが難しいもの…。バランスについて、マインドフルネスのプラクティスにもあったなあ…。

 またしばらくして、以前ある所に摂心に行った時のことを思い出しました。曹洞宗の食事の作法を守っておられたのですが、食事をいただく前に、盛られたご飯の中から数粒お米を取り出します。それは、食事の後に、鳥や虫などの他の生き物のために残しておくと教わりました。

「虫も生きていかんとあかんからなあ…。」という師匠のお言葉が甦りました。「虫も鳥も私もおいしいものが好き…。おんなじなんだ…。じゃあ、ちょっとぐらい食べられても仕方ないか…。でも全部は食べないでね。ちょっとだけだよ。」とまだまだ強欲な私は思います。扁桃体と前頭前野が話し合いをした結果、完全に青々として虫一匹いないジャガイモの葉とすべて大きなジャガイモはあきらめ、ジャガイモの周りを指でホジホジしながらヨトウムシを、ムカデ、ハチを刺激しないように一匹ずつ取ることにしました。

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