主語のない碑文

マインドフルネスの実践を続けていくと、私たちの「あってもしくないもの」=ストレス=苦への対応として、まず私たちの中に根深く残る反応をを見つめるとその反応は何千年も続けてきた原始的な反応であることが理解できる。マインドフルネスは、その反応を意識しつつ、別の新たな創造的対応を作り出す可能性がある。
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広島の慰霊碑

 まさに今、世界中の人々は、まさに第三次世界大戦が始まろうとしていると感じているのではないでしょうか?私もその一人です。

 そのような中、私には一つの記憶が蘇ります。私が中学生の頃、社会の授業だったと思うのですが、広島の原爆死没者慰霊碑についてのことについてでした。

 「安らかにねむって下さい 過ちは繰り返しませぬから」

 この碑文には主語がありません

「過ちを犯したのは誰なのか?日本なのか?アメリカなのか?それとも戦争そのものなのか?」

 この碑文の作成に関わった当時の方々は、被爆体験を持つ人々、学者、法律家、仏教、キリスト教、神道等、宗教や宗派を超えた宗教者たちでした。日本人だけではなく、外国の方もおられました。

 当時、敗戦後の混乱した日本の大地に立ち、絶望や怒り、悲しみ、悔恨の極限にいた時に湧き上がる様々な思いや考え、感情、そして、身体の感覚。そして、これらを明晰に意識したうえで、その時の人々が未来のために思い至った深い思いがこの碑文です。

 過去を裁くのではなく、未来に希望を託し祈る…。

 主語をあえて書かないことで、「過ちを二度と繰り返さない責任は、すべての人にある」という認識が普遍的な祈りへと昇華されていったということでした。

 そして、同時に未来を生きる人々へ「今、ここにいる私たちの選択を受け取り、繋いでいってほしい」というメッセージです。

原始的な反応

 今、SNSの発信を通じて私たちは、ほとんど同時にイランとイスラエルの戦いを目にしています。

 このような光景を見ると、私たちの多くは、とてつもないくらい大きな脅威やストレスを感じます。
 この反応は、マインドフルに意識していなければ原始時代と同じです。

 「戦うか、逃げるか、フリーズする」です。

 少しだけ、静寂な時間を取り、呼吸に注意を向けてみます。

 そして、自分に問いかけてみます。

 「私は今どんな風に感じているのか?」「そして、私に今、何ができるでしょうか?」

 「ああ、世界大戦がはじまるかもしれない。怖い。体がすくむ感じがする。戦火の中の人たちは、どれだけの恐怖だろう。けがをしたら、どれほど痛いだろう。私の小さいころ、まだ戦争の断片が生活の中に残っていた。今ミサイルの戦火の中にいる人たちは、私と同じ人間。戦場に出ていく人たちは私の子どものような年齢の若い人達。その人たちには、私たちと同じように大切な親がおり、もしかしたら小さい子どもがいるかもしれない。そして、きょうだいがおり、祖父母がおり、パートナー、友人、知人がる…。

 戦争が起きなければ、今日も穏やかな日々が続いていたことでしょう。

 また同じことが繰り返されている…。何度も世界中の地域で…。

 どれだけ多くの人々が戦争の中で命を落としていったのか。もう、気が付いてやめなければいけない。大きな脅威を前にした時に、「戦うか、逃げるか、フリーズする(恐怖で凍り付く、無力感で何もできない)」かの反応から、新たな次元へ踏み出さなければいけないのではないか。」と心に強く感じます。

私たちは選択できる

 新たな対処法。大きなことはできないけれど、何かできることはないかしら?

 一人一人が気付き、行動すれば…。原始的な反応ではなく、選択して、そして対応してみる…。

 私の心には、リトリートで聞いたスジャータの「やさしさ」、そして、四国のお遍路に行った時に聞いた空海の言葉が浮かびます。

 「四摂とは、いわゆる布施と愛語と利行と同時なり」~「秘密三昧耶仏戒儀」~

 「私たちが他人に行うべきは、布施をすること、やさしい言葉をかけること、その人のために働きかけること、そして、他人と心を通わせることです。(現代語訳)空海入門 p. 156 福田亮成 幻冬舎

 SNSのコメント欄には、さらなる暴力の連鎖をあおる投稿があふれています。

 暴力の連鎖を止めるためには、自分の気持ちに気づき、静かにそれを見つめ、思いを共有すること、関心を持つ仲間とつながること。優しい言葉や感謝の思いを周りの人に伝えること、平和につながる私たちの記憶を繋ぐことは、未来に生きる人たちへの責任ある贈り物にもなるように感じます。

「一つの優しさが、目には見えないけれども必ず周囲に波紋を広げていく…。」ことを祈って。

 戦場になっている国々の人々に心を寄せて。

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