Ancient One World #2

エジプトを旅行していると、蛇(コブラ)を王の権力の象徴としている。この意味についてマインドフルに感じ考えると様々な人の渇望のイメージが浮かび上がる。
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干支は巳年

 2025年は、日本の干支では巳となり、蛇を表しています。

 エジプトツタンカーメンの黄金のマスクの上部には蛇の一種のコプラが鎌首を持ちあげたコブラが付いています。このコブラは翼を持ちウアジェト(ウジャト)と言われ、下エジプトの守護女神で、周囲を威嚇しながらファラオを守護しているそうです。
 旧約聖書には、エバをそそのかして善悪の知識の木の実を食べさせたとして蛇が登場します。日本では、原初の神祭りの様を伝える日本最古の神社とされている大神神社の「巳の神杉」には、大物主大神の化身の白蛇が住むと言われ、人々は蛇の好きな生卵を供えお願い事をします。

 私は、散歩している時に何度か蛇に遭遇しましたが、全身の毛穴が総毛立ち、フリーズしてしまいました。

 「蛇」という気持ち悪くて、身の毛がよだつ様な生き物が国を超えて私たちの神話、信仰、文化の中で、なぜ重要な役割を担っているのか不思議に感じていました。

 巳年にあたり、You-Tubeで山田五郎さんが「オトナの教養講座」という番組で、「絵画」を切り口として、大変興味深いお話をされていました。「巳年・西洋絵画に似る蛇」悪魔か、神の使いか!?」「絵で見るギリシャ神話と蛇 蛇退治神話が世界中に多すぎる!?」です。

 最後に、「ギリシャ神話は蛇信仰民族を征服した歴史ではないか!?」との壮大な考察を述べておられました。

 ちょうど蛇年の初めにエジプトへの旅行を控えていた私は、大変興味を持って見ていました。

多神教の国だったエジプト

 ギザの三大ピラミッド、スフィンクス、アスワンハイダム、ナセル湖、アブシンベル神殿と見学していきました。古代の遺跡を作った人々の営みにただただ圧倒されました。

 ナイル川を船で下り、ワニの神様のコム・オンボ神殿、ハヤブサの神様のホルス神殿を見学すると、当時の人々が身近にいた動物の能力にいかに畏怖の念や神聖さを感じていたことが伝わってきます。それらを祈り、祭るという気持ちは、八百万の神々の国から来た日本人の私には、とても自然で何か相通ずるものを感じました。

 多神教の国だったエジプト…。

 そして、王家の谷のセティ1世のお墓では、その大きさと荘厳さ、壁面や天井の装飾の精緻さに驚きました。天井には天体図が描かれ、周囲のレリーフにはセティ1世の死後の旅立ちが大変美しく描かれています。そして、その中には、多くの蛇が描かれていました。

 それらの蛇は、まるで王の死後の冥界の世界と、その復活の旅路を平安に、そして静かに知恵を持って導びいているように感じました。

セティ一世を導く蛇たち
セティ一世を導く蛇たち
蛇に導かれるセティ1世達
蛇に導かれるセティ1世たち

光と影

 アブシンベル神殿で、ナセル湖から昇ってくる太陽を見ました。太陽は日本で見る太陽とは全く違い言葉を失いました。圧倒的なエネルギーと存在感を放ちながら、空と湖にその光を放ちながら登っていきます。

アブシンベル神殿前 日の出前
アブシンベル神殿前 日の出直後

 アクエンアテンのレリーフに彫られている太陽そのものだと感じました。1月は、1か月後の春分を起点とすると、太陽は一番エネルギーの低い時期です。それにもかかわらず、このように圧倒的なエネルギーを放つこのエジプトの太陽…。

 古代のエジプトの王が人々を完全に支配しようとするならば、自分の権威の象徴として、唯一の存在である太陽と自分を同一視するのも、他の人に対して唯一の絶対的な太陽のごとく振舞うのもある意味自然なことでしょう。

 そして、光が強ければ強いほど闇も深くなります。

 その時、日本人の私にふと浮かんだ言葉は、「満つれば欠ける」ということわざです。月の満ち欠けに由来することわざで、物事が極まった瞬間から次は必ず欠けていくことです。そして、また無となり、出発点に戻る…。

 太陽を見ていて月を思い出す…。不思議なことでした。

 強大な太陽の化身である王であるアクエンアテンの息子、一番近くにいたツタンカーメン…。

 彼の背後に広がる闇は限りなく暗く深くなっていったことでしょう。

そして、再び蛇に戻る

 何かが極まり、そしてそれが崩れ、また無に戻り、そしてまた極まっていく繰り返し。

 それは、円で描かれたり、ウロボロスで象徴されたり、陰陽で表わされたりします。永遠の循環、死と再生、破壊と創造、無限、奥深い知恵など多くの宗教や文化で象徴的に用いられてきました。

 そしてそれは、まさに蛇のイメージです。何度も脱皮を繰り返し変容し、砂漠でも湿潤な土地でも、どこからでも湧いて出てくるような力強い生命力、そして、姿や目つきで人に恐怖を与えるだけでなく、実際に人間を殺すほどの毒を持っている、その毒の力やイメージを使えば、完全に人を支配できる力を持つことができるかもしれない。そして、蛇の猛毒からは、新たに人を救う薬が誕生する可能性もあり…。

 もしかしたら、蛇はあたかも鏡のように人間の貪欲な「渇望」を映し出しているのかもしれない…。

 そんなことを考えながら、エジプトの旅を続けます。(続く)

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