人生を花開かせる~Flourishing~
2024年6月の日本感情心理学会にて、関西学院大学の有光興記先生の研究室で取り組んできた「一般成人に対してのマインドフルネスストレス低減法(MBSR)の実践報告」についてお伝えします。
発表から今まで、どのような文脈で皆さんにお伝えするのが良いかなあとずっと考えてきました。
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)、マインドフルネスと聞くと、「ストレスや不安を減らす、コントロールするためのもの」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。
けれども、今回の研究で注目したいのは、「マインドフルネスは、私たちの心に喜びや幸福感といった『ポジティブな感情』をもたらし、人生を豊かに花開かせる(Flourishing)ことができる」という視点でお伝えしたいと思います。
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)で何が起こったのか?
今回のプログラムでは、一般成人の方々を対象に、MBSRの正式なプラクティスの数々、例えば静坐瞑想、ボディスキャン、立位、臥位のヨーガ、ストレス反応とストレス対応、コミュニケーションの中のマインドフルネス、そしてサイレントリトリート(静寂の中で行う実践)、日常生活への応用などを含む10週間のMBSRプログラムを実施しました。
参加されたみなさんは、日々の生活の中でも毎日音声ガイドを聴きながらていねいに取り組みを続けてくださいました。
プログラムの前・直後・そして3ヶ月後のタイミングで心理テストを実施し、感情や心身の状態がどう変化したかを追跡調査しました。
分析の結果、とても興味深い変化が見られました。
心理学の研究において、効果の大きさを表す指標に「効果量(d)」というものがあります。
一般的に d = 0.8以上で「非常に効果が大きい」 と判断されるのですが、今回のMBSR実践では以下のような数値が確認されました。
- 主観的幸福感:d = 1.10(圧倒的な向上!)
- セルフ・コンパッション(自分への優しさ):d = 1.05
- POMS 活気・活力:d = 0.93
- マインドフルネス(今ここに気づく力):d = 0.92
特に興味深いのは、「喜び」や「畏敬の念(自然や生命の深さに感動する心)」といったポジティブ感情のスコアが、プログラム終了(Post)から3ヶ月後(Follow)にかけても維持・向上していたことです。
一時的なリラックスやリフレッシュで終わるのではなく、参加した方の日常の中に「幸福感」がしっかりと根付き、育ち続けていることが科学的に示されました。
ストレスを「減らす」から「花開かせる(Flourishing)」へ
マインドフルネス研究の最前線(オックスフォード大学のカイケン博士など)では今、マインドフルネスの目的を「苦痛やネガティブをゼロに戻すこと」だけではなく、「人生をより豊かにし、その人らしく花開かせること(Flourish)」 へと広げる視点が大切にされています。
今回の研究結果は、まさにその「Flourishing」が起こるプロセスを証明するものとなりました。
- 自動操縦からの脱却 日々忙しく過ぎ去る時間の中で「今、ここ」の身体感覚や感情に気づくことで、日常にある小さな幸せや喜びに気づく感度が高まります。
- セルフ・コンパッションの芽生え 「自分を責めない」「失敗した自分も温かく受け入れる」姿勢(セルフ・コンパッション)が育つことで、心が安全な土壌となり、素直に幸せを受け入れられるようになります。
参加者の方からも、「身体を動かして自分のその時々の瞬間に意識を向けることの大切さを学ぶことができました」 「ストレス状態になったときにどうすればいいかがわかっているというのが、気持ちの守り神になっています」
といった温かいお声をいただきました。
おわりに
私たちは誰もが、自分の中に「幸せを感じる種」を持っています。 マインドフルネスの実践は、その種に水を与え、日常の中で豊かな花を咲かせる(Flourish)ための優しい習慣です。
今回の研究で得られた知見を、これからもブログや実践の場を通して、次の世代や多くの方々に大切にお届けしていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【掲載にあたっての注記】※本実践報告は学会発表時のポスターに基づきます。連名者の表示名につきましては、マインドフルネス関係での活動名(玉井)にて記載・再掲載しております。

